【神戸刑務所編スタート!】ヒガシエニシエ 嗚呼!! 花の神戸プリズン《さかはらじん懲役合計21年2カ月》
凶悪で愉快な塀の中の住人たちVol.27
◼︎お前らこれから数時間、着くまでピクリとも動いたらアカンで
ボクたち珍妙な一行は入ってきた新幹線に乗り込み、指定された座席に座った。すると坊主頭で熊のような体形をした、どちらかというと、ヤクザにでもした方が似合っているような顔相の悪い警備隊長が、
「お前ら、今から言うこと、よおく、耳かっぽじって、聞いとれや。ええな、お前らこれから数時間、着くまでピクリとも動いたらアカンで。ええな、わかったな。わかったらそこでおとなしく、じっとして座っとれや、ええな!」と、巻き舌の大阪弁で命令した。
ボクはこの大阪弁を聞き、昔読んだ、『嗚呼!! 花の応援団』(どおくまん著・双葉社・1975~79『漫画アクション』連載)という漫画を思い出し、内心、これから先のナニワの神戸刑務所は何やら楽しいものになりそうだぞ、と嬉しくなった。
新幹線は神戸へ向かって出発。到着するまでの間、ボクは新幹線が停まる度に怖い警備隊長に〝点を切って(様子を窺って)〟は、乗り降りする女性客たちの、夏の開放的な装いに忙しく目を動かしていた。
そんな乗客の中には、夏物の薄い服が身体にピッタリ貼りついて、肉感的なボディラインを惜しげもなく、かつ挑発的に浮き立たせている、エロスの塊(かたまり)のような女性客もいたから目の保養になる。
例によってボクは、そんな女性客の胸の膨らみや、形よく整って張ったお尻などが気になってしまい、どうしてもその誘惑に負けて見てしまうのである。ボクにはまったく、オレは男なんだから、我慢して見ないぞ、という意地やプライドの欠片(かけら)はなかった。
ボクは〝いつも自分に素直であれ〟と思っていたから、そんなときだけ、自分の気持ちを尊重して忠実に実行してしまうのである。そして、その状況や光景を密かに楽しみつつも決して理性をなくさないように、気持ちをコントロールする。そうしないと、熊みたいな警備隊長から公衆の面前で、「このボケ、どこ見てんねん。何、目え血走らせてんや。このボケ!」と、大阪弁で言われ兼ねなかったからだ。
しかし、ときどきハッとするような身体が締まった美人女性客が乗ってくると、つい我を忘れて目と一緒に頭も動かしてしまう。目だけを動かすのには限界があるからだ。そして、そのまま躍動する女性の身体を見ては愉しんでいたのだった。
そんな自分に気がついて、我に返ったときのボクは、我慢しておとなしくしている他の受刑者たちの手前、バツの悪い気持ちになってしまうこともあった。とはいえ、ボクはどんな状況にあっても、その瞬間、瞬間を最大限に楽しむことにしているオプチミスト、楽天主義者である。
(『ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜つづく)
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2020年5月27日『塀の中のワンダーランド』
全国書店にて発売!
新規連載がはじまりました!《元》ヤクザでキリスト教徒《現》建設現場の「墨出し職人」さかはらじんの《生き直し》人生録。「セーラー服と機関銃」ではありません!「塀の中の懲りない面々」ではありません!!「塀の中」滞在時間としては人生の約3分の1。ハンパなく、スケールが大きいかもしれません。
絶望もがむしゃらに突き抜けた時、見えた希望の光!
「ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜」です。